静岡県には主に病院勤務医で構成される整形外科医会と主に開業医で構成される臨床整形外科医会があります。臨床整形外科医会には約200名の整形外科開業医が在籍し県全体合同での研修会を年2回、また東部、中部、西部のそれぞれの地域での研修会を年に数回独自に開催し、開業医といえども常に最新の医療知識を吸収すべく日々研鑽しております。
そもそも整形外科とは何でしょうか。よく初めて会う人に整形外科医であると自己紹介するとあまり病院になじみの無い若い世代の方の中では3人に一人は美容整形外科と間違います。中国語では骨科というらしくむしろそちらの方がわかりやすいかもしれません。ここに日本整形外科学会のコメントがあります。
整形外科とは運動器の疾患を扱う診療科です。身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科で背骨と脊髄を扱う「脊椎外科」、上肢を扱う
「手の外科」と肩関節外科」、下肢の「股関節外科」、「膝関節外科」、と「足の外科」、スポーツによるけがや障害を扱う「スポーツ医学」、「リウマチ外科」、腫瘍(できもの)を扱う「骨・軟部腫瘍外科」、骨粗鬆症などを扱う「骨代謝外来」と多数の専門分野があります。スポーツ障害や交通外傷、労働災害などに代表される打撲、捻挫、骨折などの外傷学は勿論のこと、変形性変化を伴う加齢疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、痛風、運動器の腫瘍、運動器の先天異常など先天性疾患など、新生児時より老年まで幅広い患者層を扱います。
2007年に日整会よりロコモティブシンドローム(ロコモ)という概念が
提唱されました。これは加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗鬆症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す言葉です。2014年には老年医学会から、老化により身体的・精神的機能が低下し要介護の前段階の状態であるフレイルが提唱されました。いわばロコモは身体的フレイルであります。
予防に勝る治療なしとはよく言われる言葉であります。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症で予防がいかに大事かを我々人類は痛切に思い知らされました。ロコモやフレイルにおきましてもそれになってからでは遅く、その予防が何よりも大切です。その一助となるよう日本整形外科学会は毎年10月8日を「骨と関節の日」と定め、我々臨床整形外科医会と整形外科医会がタイアップして整形外科疾患のテーマを決めて各地で様々な行事を行っています。市民講座としては整形外科医による講演会、それに続き無料医療相談も行っております。
日本人の平均寿命は1955年時点では60歳台でした。2020年では男女ともに
80歳台となっております。同じ寿命でも健康寿命というのは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間の事を言います。平均寿命の延伸とともに健康寿命との差は開き男性で9年、女性で13年と増大しております。
ご高齢になり要支援、要介護になった要因として運動器障害はなんと約25%
もあります。これは認知症の18%よりも多いのです。
誰でも等しく年をとります。しかしご高齢になっても健康であり続け、健康寿命を平均寿命に限りなく近づけるにはロコモティブシンドロームにならぬように体、特に運動器のメンテナンス、トレーニングなどがいかに重要かわかると思います。何か運動器でお困りでしたら運動器の専門家である整形外科医に
気軽にご相談ください。我々臨床整形外科医はいきなり手術をお勧めすることはまずありません。手術によらない保存療法の中で最適なものを患者さんの病状、仕事、家庭などの背景をバランス良く勘案し最適なものを提案してくれる筈です。最近整形外科の向こうをはる民間療法が増えているように思います。個人的には頭から否定するものではありませんが、とりあえず最初に相談するのは整形外科にしましょう。患者さんにご満足いただける結果がコミットされるものと信じます。
このホームページでは県下の整形外科医を検索することができます。ぜひご利用いただき皆様が健康でいられることを願ってやみません。