2017年野球肘障害予防講習会への質問事項に対する回答

 折角ご質問を頂いたのに講演中またはその後にお返事できず申し訳けないと思います
来年は、お書き願ったアンケートのご意見を参考にしてもう少し早めにご質問を寄せ
て頂ければ、それに応えるような形で講演を計画していきます。
ご協力お願いします!
アンケートも集計が終わり、来年の予防講習会の計画に参考とさせて頂きますので合わせてご覧ください。
 専門の諸先生ともご相談して回答を書いてみました。
SH高
SK高
 プロ選手のシーズン中におけるノースロー日の設定の仕方
シーズン中、ピッチング練習の球数について
   WBCの特別ルール(球数制限と登板間隔制限)が可なり厳しいのはご存じと思いますWBCの主催はMLBですから、傘下の選手がケガでもしてシーズンを棒に振ったら大変ですし、在米の日本人選手も参加を控えるように各チーム
がプレッシャーを掛けるようです。一説には医療保険が無く、障害保険は個人で加入している米国では大会中にケガした選手の治療費は保険金社が払わないと云われ厳しいルールが急遽決まったと云います。
日本でも、30年ほど前に整形外科学会が投球数制限の提言をしましたが当時はなんの反応もありませんでした。しかし、最近臨床スポーツ医学会の提言は全日本軟式野球連盟を始め採用して頂いております。
しかし、それは試合の際のルールです,それでもWebを見ますと賛否両論で「相手に沢山投げさせろ」という戦術変更する意見も見られます。
結局は「肩・肘は消耗品」と云う共通意識を野球人全員が持って子供逮を守ることが大切ではないでしょうか!
MLBでは、すべての野球選手を守ろうとPitch Smart USAのサイトを公開しています。7歳〜18歳まで6段階に分けて年間を通しての注意事項を詳細に述べています。ご参考にしてください。
   
   野球随害は・足を踏み込むfoot plant)sarly cokingからボールを離す ball releaseの間・すなわち加速から急激に減速する際肩・肘に負担がかかります。
 FN高  フォームに問題がなくても投球することで肘は痛めるものでしょうか.。スピード(球速)が上がっていくと肘への負担は増すのでしょうか
HS高
FS高
投げ方による肘の障害のパターンを知りたいです
故障しないためのトレーニング
 HK高  中学時代から肘痛があり現在名古屋スポーツクリニックに通っています。肘内側靭帯に炎症を起こしています。(治療中です)
完全に曲がったり、伸ぴたりしない状態でいい球を投げるには、どのようなことが大切でしょうか
   はいわゆる5つの[関節]の複合体なので多軸性と云います。言い換えると各関節の構造上弱いところに破綻が来るのです。折角一箇所にストレスが集中しないように複合体になっているのに1箇所(関節は肩峰下であり、筋肉は棘上筋です)にストレス(機械で言う歪)が集中するのがpitchingです。
同じ部位が年齢的に磨耗するのが、四十肩、五十肩です。
従って、野球肩の予防の体操と五十肩の予防の体操は殆ど同じなので、球児に付き添つてきた親と一緒に体操を覚えてもらいます。Inner muscleの弛化とは別ですが。
   それに比して、は屈伸だけの単軸性ですが、投球の最後に回内しますので前腕が二本になっています。一本の骨(上腕骨)が肘閲節で二本(尺骨と樵骨)になるので構造上無理が起こり@外側型(上腕骨小頭離断性軟骨炎)、A後方型(肘頭の障害)そしてB内側型(テニス肘と同じですが前腕屈筋腱で強く引っ張られて付着部の炎症を起こす)になります。@,Aは骨・関節の負担で、Bは筋肉の負担です。
肩・肘に対して、負担のかからない投球法は図のようにいわゆるsingle planeでの投球と云われています。理想的な投球フォームでは、early cockingの肩最大外旋位からfbllowthrough(内旋・回内)までの上腕が通過する軌道と肘関節が屈曲から伸展に至る平面が一致する為、肘の伸展動作が入る前は肘関節から末梢が上腕に隠れて正面(打者の方)から見えない。
上腕と前腕の軌道が同一平面(single)にならないと、肩の過剰な内旋運動を無意識に行ってボールの出る方向を修正する為いわゆる"腕の横降り”が起こり肩や肘のストレスがかかる。
   
   single planeでの投球働作のイメージ
理想的な投球フォームでは、MERからフォロースルーまでの上腕の通過する軌道と肘関節が屈曲から伸展に至る平面が一致するため、肘の伸展勤作が入る前は肘関節から抹消が上腕に隠れて正面(打者の方)から見えない。
    中学時代からの肘痛は、すでにケガ(外傷)でなく障害になっていると思います。
伸びない、曲がらないのは内側靭帯損傷が契機(きっかけ)かもしれませんが、閲節内の骨・軟骨に支瞳が来ているはずです。肘の機能陣害の治療も大切ですが、上記の一連の投球動作とsingleplaneを念頭に下肢、脊柱を強化して45。斜め上方にむけて。catch ballから体作りが必要でしょう.
但し、昔投手で4番打者であづた打盤の神様川上哲司さん、玉貞治さんなど障害で肘が伸びなくなった方はプロでは投手は無理です。
古い文献ですが、昔スワローズの「投手」70人近くの肘のレ線調査結果があります。
殆どの選手は、内側、外側の著しい変形性関節症が見られましたが、軽度の外側の変形は3人にしか見られませんでした。可動域制限の残る外側型になり初期治療が遅れると骨の変形は治せませんので可動城制限は残り「大学ではレベルによりますが何とか投げられても、社会人野球でも投手としては通用しません」
投手以外への復帰を同時に模索・指導すぺきでしょう。
 SS高
MM高
SR高
SN高
 どの程度の痛みが練習を中止するボーダーラインなのかを詳しく知りたい
痛めることを防ぐアップとダウンについて
肘の疲労を取る方法  肘のストレッチの仕方
負傷しないための効果的なストレッチがあれば教えて頂きたい
 SS高  肘が時々はまるような音がするのですが、大丈夫でしょうか
肘が痛くなる原因をおしえてください
肘が痛くても投げなければいけない時、どのようなケアをすれば宜しいのでしょうか
 S高
IK高
試合後の投手のクールダウンの仕方を教えて下さい
野球肘と筋肉疲労の違いを教えてください
    上記のコメントでお判りでしょうが、痛みは「負担を減らすようにとの神の警鐘です」
野球障害は、筋肉・腱、関節(成長期は軟骨、高校生は骨)の疲労です.
ストレッチは、閲節については可動域が十分にあることをチェックするだけで十分でしょう。Stretch(伸ばす)必嬰はないでしょう。筋肉については、「ゴムは伸ばされてこそ、その反動で縮む力が出る」と考えて前腕の屈筋だけでなく伸筋もストレッチしてください。
ウオーミングアップは、前述のPitch Smaetでも各年齢層で勧めています。Stretchで自分の筋肉に声かけをして状態を把握してから徐々に上げてください。
ダウンは、その逆ですが関節の可動域を戻しながらチェックして、筋肉はストレッチ
と軽い収縮を繰り返しながら疲労物質を除去するつもりで充分と思います。
Icingは第1回日米野球で試合終了時に全選手がフィールドでストレッチをしなが
ら肩・肘に氷嚢を巻いていたのがきっかけと云います。肘については肘関節
の周りに厚い筋肉もありませんので関節を冷やすことは可能ですが、肩の棘上筋(擦れるところは肩峰下で骨の奥)冷やしたいのにその上に厚い(熱い)三角筋があり目的とする所は冷やせませんので個人的にはその効果に疑問を持っています。
Pitch Smartで、各年齢層で年間を通して2〜4カ月のoverhead運動を避け、しかも野球以外のスポーツを勧めているのは印象的です。日本の事情には合わないでしょうが、耳を傾ける価値はあるでしょう。
野球は、それ自体一部分にストレス(歪)が集中するスポーツです。ポジション的には、投手と捕手に。その投手と捕手は、投球動作により肩・肘にストレスが集中することを配慮してください。
   文責 高橋須川整形外科医院 須川 勲

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